本と韓ドラのメモ

読んだ本、視聴したドラマの記録。

本④ やがて訪れる春のために(はらだみずき)

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入院中の祖母から、庭の様子を見てきてほしいと頼まれた村上真芽。幼少時代に暮らしていた家を訪ね目にしたのは、荒涼とした景色だった。花が咲き誇っていた庭に、しっかり者の祖母にいったい何が起きたのか?庭を再生しようとする真芽は、様々な謎や家の売却計画などの困難に直面するが、幼なじみたちの力を借りながら奮闘する。季節の花々が彩る庭を舞台に描くあなたのための物語。

 

 

タイトルが好きで読もうと決めた。各章が季節の移ろいと出来事をまとめてあり二十四節気で表してある。様々な花と季節の移ろい、それだけで惹かれた。

「やがて訪れる春のために」は春でありハルでもあるのかな。たった一人残されて孤独の中で何とか生きてきたハル。そして認知症と診断され家へは帰れないハルのことを思うと胸が痛くなる。もう一度ハルの家に帰らせてあげることはできるのだろうかと思いながら読み進める。

 

家に帰りたいというハルの想いを受け止めて、一時的だがとうとうハルをハルの家に迎えることができるところは少しホロッとする。でも同時に何とか家で生活できるようにできなかったのかと思ってしまったが、親族ともそのことで対立しなかったし、ハルの家の売却計画が持ち上がってカフェを続けられるかわからなくなったのに、親族の思いを受け止めたところが意外だった。結局いろんなもどかしさはあるが、親族とも良い関係でいられたのだと思う。

それでもハルが愛した庭の再生をやめることはなかったのは、ハルのためでもあり、それが自分のためでもあったのだろう。

 

真芽の手によって少しずつ庭が蘇えり、家が片付いていく中で、幼なじみの友だちやお隣さんが協力してくれて、おまけに小さな友だちとも知り合い、少し交友関係が広かって行ったところも良かった。

 

そしてようやくカフェを開き、入院中のハルを庭に迎えるところに来ての庭の描写、「様々な花や木、タイルを貼られた道、テーブル・・・・・」これって表紙の絵ではないかと気づいてちょっと感動。アメジストセージ、ベリー、イチジク、ネコ、ホバリングする昆虫・・・も。

秋なのに様々な植物でみずみずしい情景、花を慈しむハル、真芽の生き生きとした様子に癒やされる話だった。

意外だったのは著者が男性だったこと。